【50代からの陶芸入門】シニアの穴窯体験~信楽焼に魅せられて

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自宅庭にたたずむ筆者手作りのお地蔵さん

緋色(スカーレット)に輝く信楽焼の魅力とは?

NHKの連続テレビ小説「スカーレット」をご覧になり、やきものにご興味を持たれた方がいらっしゃると思います。

私はひんやりした柔らかい陶土に触れると、何故か心がリラックスします。

陶芸を始めて10年以上になりますが、あの柔らかい陶土が、熱を加えることで硬いまったく別のものに変わるのが、今でも不思議でたまりません。

私は単身赴任の時に陶芸を始めたのですが、陶芸教室に通うのは、2年で飽きてしまいました。

電動ろくろで成型し、人工釉をかけ、電気窯で焼成するのでは、ありきたりのうつわしかできません。

そう思っている時に出会ったのが、うつわの表面に緋色が入った信楽焼でした。

【東京で穴窯体験】陶芸仲間で、スカーレットの穴窯を満喫
東京都八王子市川口在住の陶芸家・船越保さん所有の穴窯(自在窯)で、船越さん主宰の薪窯塾の仲間が、年2回窯焚きをしています。NHKの連ドラ『スカーレット』の主人公と同じく、信楽焼を焼いています。私も信楽焼の持つ緋色の肌合い、緑のビードロ釉、渋く深い灰被りの青や紫の焦げに魅了された一人です。信楽焼は「炎の芸術」です。

東京の陶芸家・船越保さんの無量庵で作陶する筆者

信楽焼は、陶器ではなく炻器(焼き締め)だった!

信楽焼は備前焼と同じく、やきものの分類としては炻器(せっき)に属します。

焼成温度が低い順に並べると、土器、陶器、炻器、磁器の順です。

炻器の焼成温度は1100~1250度と高く、陶器に比べると磁器のように硬く焼き締まります。

このため炻器は焼き締めや半磁器とも呼ばれ、陶器と磁器の中間的な性質を持つやきものです。

【趣味で始める陶芸入門】やきものの種類~ その違いと特徴を解説
やきもの種類は4つ。陶器、磁器、炻器(せっき)、土器です。①陶器は吸水性があり、温かみがある。美濃焼や瀬戸焼、益子焼、笠間焼、唐津焼が有名。②磁器は石から作られ、白くて硬い。有田焼、京焼、九谷焼が有名。③炻器は土をかたく焼き締めたもの。信楽焼、備前焼、丹波焼が有名。④土器は低温で焼かれたもろい焼き物。園芸用の鉢など。

筆者作の花入れ。緋色に緑のビードロが見える。

信楽焼の特徴とは?

信楽焼のスカーレット(緋色)は、高温で焼成することで、土中の鉄分が赤く発色することでできあがります。

そのほか、灰がふりかかりできる緑色のビードロ釉、灰を被ることで青や紫の焦げが出たりと、信楽焼は自然と偶然が織りなす芸術作品です。

「信楽焼は炎の芸術」と言われるのは、このような理由からです。

私は自分で作った信楽焼の花入れを家で使っていますが、市販のものと違って、花が長持ちします。

全面を釉薬で覆う陶器や磁器と違い、自然釉で焼成した信楽焼は、うつわ自体が呼吸するので、中の水が腐らないからです。

スカーレットで注目の信楽焼【全国の焼き物と窯場を紹介】
信楽焼(しがらきやき)連続テレビ小説「スカーレット」で注目されているやきものの里、信楽。ドラマは信楽を舞台に、女性陶芸家の波乱万丈な人生を描きました。物語りでは、主人公の女性がもの作りの情熱と喜びを糧に、天性の明るさでがむしゃらに突き進み、

筆者が作った信楽焼の抹茶碗

スカーレットの緋色に魅せられて

いまは、薪を使い穴窯や登り窯で焼成している陶芸家は、ほとんどいません。

松やにが多く、焼成温度の高い赤松は入手が難しく、また穴窯は焼成に時間がかかるため、手間と時間がかからない電気窯とガス窯が一般的です。

「スカーレット」で使われている穴窯で焼成している陶芸家は、ほとんどいません。

私は滋賀の信楽焼の窯元を何度か訪ねるうちに、信楽焼きの緋色にすっかり魅せられてしまいました。

その窯元では、蛇窯で焼いたときが、特に鮮やかな緋色(火色)が出るそうです。

その後、東京で信楽焼を焼ける穴窯はないか探し、やっと見つけることができました。

ある雑誌の「東京で穴窯焼成する陶芸家」という特集を見て、八王子で信楽焼や黒陶を焼く陶芸家の船越保さんを知りました。

【自宅で始める陶芸】役に立つYouTube陶芸チャンネル5選
速く陶芸を上達したいなら、陶芸教室だけでなくYouTubeで予習、復習すれば、数倍の速さで上達することができます。陶芸に関する動画の中で、ここでご紹介する5つのチャンネルは、それぞれの陶芸家が自身の体験をもとに作成した、陶芸入門から中級までの動画です。

東京で信楽焼を焼ける穴窯を発見!

その後、船越さんの陶房に通い続け、1年に2回ほどのペースで、穴窯で窯焚きをしています。

船越さんが主宰する薪窯塾の仲間が手分けして、徹夜で窯焚き、火の管理をしています。

金曜の午前中に火入れをし、日曜日の夕方、もしくは月曜の朝まで焚き、その後温度を徐々に下げています。

燃料には赤松の薪を使い、1250度まで窯の温度を上げます。

1週間後の窯出しをしますが、どんな作品ができているか、窯出しが一番楽しみな瞬間です。

窯から出してみないと出来栄えがわからないところに、信楽焼の魅力があります。

私のような素人で、成型が下手でも、窯焚きの具合でうつわに自然釉が降りかかり、面白い景色が表れるときがあります。

まさに信楽焼の真骨頂です。

NHKの朝ドラ「スカーレット」で陶芸に興味を抱き、穴窯を体験したいと思われた方、東京でもチャレンジできますよ。

窯出しの風景

スカーレットの緋色が、なかなか出てこない !?

でも実際には、狙ったスカーレット色のうつわには、なかなかお目にかかれないのが実情です。

でも、そこが信楽焼の面白いところで、最終的には炎と灰が織りなす偶然に委ねるしかありません。

次回はもっと素敵なうつわを作ろうと、意気込んでいます。

無量庵の穴窯・自在窯の前のお地蔵さん

信楽焼をつくってみませんか!

NHKの連続テレビ小説、「スカーレット」の世界を肌で感じたいという方は、事前に船越保さんへ直接、見学や陶芸体験を申し込んでください。

船越さんのお人柄から、快く引き受けてくれると思います。JR八王子駅からバスで40分です。

連絡先・場所:無量庵陶房・自在窯・薪窯塾
〒193-0801 東京都八王子市川口町3382
電話:042-654-8972(陶芸家 船越保)

船越さんは、おもに花入れを中心に作陶しており、作品を常時Facebookやインスタグラムにアップし、更新しています。

彼の信楽焼の作品をご覧になりたい方は、下記アドレスをご覧ください。

Facebook https://www.facebook.com/pages/無量庵陶房/333807703368862

Instagram https://www.instagram.com/jizaigama

プロの陶芸家にインタビュー~陶芸家 船越保さん【陶芸を語る】
自然と対話し、自然をそのままくりぬいたような造形美を追求する孤高の陶芸家船越保(ふなこし たもつ)さんが作るうつわの特徴の一つが、その流れるような造形美にある。ながく工業デザイナーとして活躍した経験から、自然に身に着いたものと思われる。作品

文:小暮貢朗